大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)30号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(要旨)

本件記録によれば、被告人に対し昭和二四年八月二九日付起訴状を以て暴行並傷害器物毀棄罪の公訴が提起せられ越えて同年九月十四日付追起訴状を以て更に詐欺罪の公訴が提起せられ而して是等の各公訴は原審に於て最初から併合審理された事並被告人は同年八月三〇日に弁護人橋本福松と連署の『弁護届』一通を原審に提起している事が明らかである。ところで弁護人の選任は弁護人と連署した書面を差出することを要するけれどもその書面は各事件毎に各通差出す必要はなく、同一審級の同一の訴訟手続を以て審理せられる段階にあつては同一被告人に対する数事件につき一通の弁護人選任届を差出すも何等支障はない。そこで本件のように同一被告人につき甲事件の公訴提起と乙事件の公訴提起との間に十数日の間隔がありその中間において一通の弁護人選任届が差出されたような場合には、乙事件について果して弁護人選任届があつたかどうか疑問を生ずる恐があるから斯様な場合には更に乙事件について別に弁護人選任届を差出し以て事を明確にするに如くはないけれども、仮令一通の弁護届であつてもそれが、同一被告人の同一訴訟手続によつて審理される総ての被告事件につきその弁護人を選任したものと認められ且つ、被告人又は弁護人から特に反対の意思が表明せられないならば、該弁護人選任届により選任届提出の前後に亘つて起訴された総ての被告事件につき弁護人選任の効果が及ぶものと解するのが相当である。今本件にあつては、弁護届は一通であるけれども該届書の記載によれば被告事件につき特に罪名を表示せず被告人に対する『刑事被告事件』につき弁護士橋本福松を弁護人に選任する旨の記載があり、又原審公判調書の記載によれば、橋本弁護人は本件暴行並に傷害器物毀棄被告事件と共に詐欺被告事件についても終始弁護人として弁護権を行使している事は歴然として居るのみならず被告人から特に詐欺被告事件については橋本弁護人の弁護を否定するが如き意思の表明は毫も認められないのであるから、右弁護届により詐欺被告事件についても橋本弁護人を選任したものと認めるのが相当である。されば所論の如く詐欺被告事件につき弁護人なくして審理した違法は無いものというべく論旨は理由がない。

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